拝啓、日本国内閣総理大臣様

 2008年3月10日以降、チベットで起きた危機的状況に対し、私たちは同じ人類として深い悲しみを覚えます。

 チベットは独自の言語・文字を有し、数世紀に渡って独自な文明を築いてきました。なかでもインド後期仏教の伝統を継承して発達した宗教を中心とする文化は、中央アジアの一大文明であることは既に世界的にも認められている事実です。この人類にとって極めて重要な無形の文化遺産が、いま絶滅の危機に追い込まれています。人類の知性が創り上げた文明は、どのようなものでもそれを暴力によって滅ぼすべきではありません。

 チベット問題は既に半世紀も国際社会のなかで置き去りにされてきました。これまでその抜本的解決を目指して真剣に取り組まれたことはありません。日本をはじめとする国際社会は、チベット問題を「中国国内の内政問題」として傍観してきました。しかしその結果、私たちがこれまで眼にしてきたものは、今回のような悲劇の連鎖にほかなりません。さらにより憂慮すべきこととして、この一連の悲劇もまた実は氷山の一角に過ぎないという事実があります。度重なる武力的鎮圧はこの問題を解決するものでないばかりでなく、むしろより大規模な悲劇の原因を生み出し続けています。

 日本国政府は「平和貢献国家」を標榜しつつも、これまで諸外国と同じようにチベット問題に関しては「内政不干渉」の原則という傍観者的立場をとってきました。今回のチベット危機に対する欧米諸国の反応と比較すれば、我が国の反応は著しく消極的なものでした。しかしこうした反応は、日本のアジアでの役割を考えれば、近隣で起こった人道の危機に際し、あまりにも無責任な態度としか思えません。我が国はこのような態度を根本的に見直さなければならない時期に来ていると思われます。

 チベット問題の平和的解決は、我が国にとってアジアにおける平和貢献活動の一環として、今後より積極的に位置付けられなければなりません。私たち日本人すべての願いは、いますぐにでも罪もないチベットの人々、さらには中国国内の虐げられている人々に平和と安定、そして公平な裁判を受ける権利がもたらされることです。我が国がこのままこの状況を傍観視し続けることは、暴力による文明の破壊に加担することにほかならないと思われます。

 私たちは、我が国政府に以下の二点を中心とする具体的な対策を講じることを望みます。

1.諸外国と協力の上、中国政府による人権蹂躙や文明の破壊活動を即刻中止させる

 チベット問題の深源には、国際的な常識を超えた基本的人権の蹂躙や暴力による文明の破壊活動があります。このことは既に国際的な人権団体による調査によっても明らかです。我が国はこのような事実を単なる内政問題としてではなく、すべての人類に共通な憂慮すべき問題であると位置付け、それを即刻中止するよう働きかけねばなりません。我が国は、中国政府に対し国際社会の一員として遵守すべきモラルをもっと尊重するように訴えなければなりません。中国が国際社会のなかで孤立せず、協調性をもつよう、同じアジアの国家として我が国はもっと積極的に働きかけるべきなのです。今後も人権蹂躙が継続するのならば、諸外国と連携の上しかるべき処置を講じる必要があると思われます。

2.ダライ・ラマ法王と胡錦濤国家主席の無条件での対話の場を設置する。

 チベットの人々が精神的に崇拝しているダライ・ラマ法王はこれまで徹底した非暴力主義を貫き、今回の一連の声明にも、双方にとって利益のある対話による平和的解決を望んでいます。チベットの問題を平和的に解決するためには、このダライ・ラマ法王と中国政府が直接対話を行うことが最も有効な手段であると思われます。そしてそのことは既に国際世論でも常識となっています。しかしこれまで対話に際して様々な条件が課せられ、実質的な和解を実現する両者の対話が行われたことはありません。この問題を全面的に解決するためには、我が国は諸外国と連携し、両当事者を無条件に議論させ、実質的な和解を遂げる対話の場を早急に設けることが急務であると思われます。

以 上

3,110件の賛同メッセージがあります